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ストリートへ行こう(末廣光夫のジャズエッセイ)


 
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ストリートへ行こう 末廣光夫のジャズエッセイ
2009/11/9更新

 

 

ジャズエッセイ

今年も有難う!

 

* ジャズストリートの開催について
先ずは今年も皆さんのご協力を頂いて、第23回神戸ジャズストリートが無事終了しましたことを、心からお礼申し上げます。
しかし、開催までは皆さんに大変ご心配を掛けてしまったことをお詫びしなければなりません。今までに経験したことのない大問題、台風が来襲したのです。何しろこの23年間にたった一回だけ、ジャズストリート二日目の午後に雨が降ったことがあるきりですから、10月にあのような大きな台風が襲ってくるなど、我々のマニュアルにはなかったのです。絶えず進路を変えていく台風の情報をにらみながら、しかし最後まで希望を捨てませんでした。「中止なら早く教えて欲しい」という皆さんの声を知りながら、「あくまでも開催!」の意志を貫いて沈黙を守ってご心配を掛けたのは、すべて委員長である私の責任です。ここにあらためてお詫び申し上げます。

ここで確認しておきましょう。
神戸ジャズストリートは、あくまで屋内の各会場でジャズを愉しんでいただくものですから、三ノ宮を通過するJRや私鉄各線が動いている限り、必ず開催します。
また皆さんがいつも楽しみにしていらっしゃるパレードはどうするのだ?というお問い合わせが殺到しましたが、パレードそのものはあくまでも愉しいムードを盛り上げる為の「オマケ」です。それをやめると言いますと、「中止」の情報だけが強調されて、神戸ジャズストリート全体の中止と誤って伝えられる危険を避けるために、中止のお知らせはスタート地点に出すだけにしました。
しかし、これは皆さんのご批判も頂きました。今後の課題として、より良い方法を模索していきたいと思っています。

* 今年のプログラムは如何でしたか?
例年全国から参加してくれるプロ、アマの素晴らしいミュージシャンたちに加えて、海外からも, 神戸でしか聴くチャンスのない優れたミュージシャンを招いています。今年は特に、ドイツの若手で今一番人気のあるグループ、Echoes of Swing ,そして久しぶりにスウエーデンから、あの人をもう1度、と以前から要望のあったバス・サックス奏者フランス・ショーストロムを中心としたHot Jazz Trioを招くことができました。彼らはそれぞれに非常に質の高い、しかも愉しめる演奏を披露してくれました。
Echoesの4人は黒いタキシード姿が決まって、初めてなのにもう若い女性たちの追っかけも多く、客席は常に若い女性で溢れ返っていましたが、その演奏たるや日本のプロでも追いつけないスゴイもので、さすがに本国でも常にスケジュールが一杯という人気の理由がわかりました。「また来年も来てもらいたいナ」と何気なしに口にすると、すかさず、「決定はできるだけ早くに願います。スケジュールの調整が大変なので」というニクイ連中でした。

* 特別の、そして大成功したプログラムの数々
プログラムを作る側として、特に私が頭をひねったのは彼らのそれぞれが日本のジャズ・バンドと共演するプログラムです。これは是非聴いて頂きたかった!
例えば、名リーダーでまた隠れたビックス・バイダーベック研究者でもあった平生舜一氏を喪ったばかりのディキシーランド・ハートウオーマーズにフランス・ショーストロムが参加した特別追悼プログラム。これは一方で、ビックスと共演していたバス・サックス奏者のアドリアン・ロリーニ生誕100年を祝う特別セッションともなり、ハートウオーマーズも、客演奏者の与えてくれる大きなインスピレイションに応えて彼らの実力以上の素晴らしい演奏を聞かせてくれました。
また、ひたすらDuke Ellingtonを追求し続けてきたアマチュアのThe FEEL Jazz OrchestraとHot Jazz Trioが共演したステージ、これもなかなか見ごたえがありました。Hot Jazz Trioの3人が譜面もなしで、直前の打ち合わせだけであれだけ完璧な演奏をすることにも驚きましたが、演奏の後、彼ら自身が The FEELの演奏にすっかり興奮して、「あれだけの演奏をするバンドが日本にあるとは!彼らは絶対世界をツアーして実力を示すべきだ!」と他のミュージシャンたちに細かく演奏ぶりを話して聞かせているのを傍らで聞きながら、ここまで自分の狙いが当たったことに大満足。今までの努力も報われた感じがしたものです。

* 神戸ジャズストリート賞の受賞者
また今年の神戸ジャズストリート賞受賞者、パオロ・アルデリッギーは、ここ数年の受賞者の中でも最高の大あたりでした。「それじゃあ、いつもはダメだったのか」と言われると頭をかくしかないのですが、その年のBreda Jazz Festival の出演者の中から選ぶ為に、まあ、はっきり言って当たり外れもあったと認めてしまいましょう。しかし今年のパオロは23歳で、あれだけ古いスタイルのピアノを自在に弾きこなし、何より感心したのは共演者たちとの音楽の対話を心から愉しんでいたことでした。日本のジャズ・ミュージシャンでも、時に一人勝ちで周りとの対話を無視する姿を見かけます。ジャズはあくまでも会話でありその中から生まれる素晴らしい瞬間である、ということをあの若さで彼は自然に身につけていました。一人の人間としても、日本でもちょっと見かけなくなったマナーの良い好青年でした。彼もまた来年は大勢の若いファンに囲まれることでしょう。

* 最高のリズム・セクション
このパオロも加えて、ドラムスのブルックス・テグラー、ベースの小林真人、ギターの佐久間和、私がひそかに最高のリズムセクションと自信をもってきたトリオは、今年まさに無敵のクオルテットになりました。Breda Jazz Festivalの最高責任者として最近とみに貫禄のついてきたアントワーヌ・トレメレンも、帰国して早速自分のホームページに、写真入りで神戸の報告を載せ、その中でこのリズム・セクションをバックし演奏すれば最高の演奏ができる、と絶賛しています。来年35周年を迎えるBreda Jazz Festivalのプランを練る彼の頭の中には、すでにこのクオルテットがしっかりとインプットされているようです。

*神戸ジャズストリートのファンの皆さん
実は、海外のミュージシャンたちがいま一番心配していることは、世界中でジャズファンの年齢層が非常に高くなっていることです。それは確かに、ジャズの輝かしい黄金時代に活躍した名演奏家たちが軒並み生誕百年を迎えているのですから、仕方のないことかもしれません。神戸のファンの若さは彼らにとって驚きであったようです。
彼らは言います。「アメリカでは客席を占めるファンは平均75歳以上だ。ドイツはまあ55歳くらいだろう。しかし、ここ神戸は・・皆若い!そして我々の演奏をしっかり聴いて心から愉しんでくれるのがストレートに伝わってきて、それがそのまま我々の演奏を盛り上げてくれて、思いもかけない素晴らしいものが生まれるんだ。
おまけに会場が、PAもなく直接ファンの皆さんに聴いてもらえる理想的な場所だから本当に嬉しかった。 又是非こんなにいい気分の皆さんの前で演奏したい!」
私も司会をしながら、すぐ前に一人一人の皆さんの輝く笑顔を見ていると、この一年の様々な苦労も吹き飛んでしまいました。

* Jazz Crewの皆さん
皆さんの笑顔、その中には勿論ボランティアの皆さんの汗で光っている笑顔もあります。私が出会ったボランティア(今年は私の独断で ‘Jazz Crew‘と呼ばせていただきましたが、たまに名前が変わるのも気分が変わって良かったのでは?)の皆さんは誰一人としてシンドそうな顔を見せる人はいませんでした。皆さん日常と違う空間で新しい自分の力を発揮することを心から愉しんでいらしたようでした。
海外のミュージシャンもいつも「こんなに最高にオーガナイズされたフェスティバルは世界にもない。みんなの心が一つになっているのが良くわかる」と言ってくれます。
あらためて、皆さん本当に有難う!
お蔭で最高のジャズストリートを実施することができました!

* 未来に向かって
この23年、皆さんに支えられてここまで来ました。皆さんは一緒にジャズを愉しんできた仲間です。私が自信を持って言えるのは、神戸ジャズストリートのファンは世界で最高です。そして皆さんこそが神戸ジャズストリートの最高の財産です。
しかし、この23年の間に我々みんな23の年を重ねました・・・。
でも大丈夫、ジャズは世界で若い優秀なミュージシャンに受け継がれています。特にヨーロッパには、まだ皆さんに紹介していない優秀な若いミュージシャンが活躍しています。
それをこの神戸に引っ張ってきて、若い人たちに聞いてもらい、豊かなジャズの魅力をわかって我々の仲間になってもらえばいいのです。そうすれば若いファンが増えるのです。もう既にこの構想は実を結び始めています。ここ数年の客席を見ていただければ納得して頂けるでしょう。
この夢をいつまでも心に燃やして "Young At Heart"で、もう来年に向けてプランを練り始めています。
ではもう一度、今年も皆さん有難う!

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